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「政府が考えるより、国民は遥かに賢明で相互扶助の精神を失わなかった。辛い状況の中でも秩序を保ち、助け合うしかないと日本人は心底知っていた」(一部略)

今日で震災から22ヶ月となります。長文ですがお許し下さい。
芥川賞作家の玄侑宗久氏が、シスターでもある文学評論家・鈴木秀子氏との対談で語った言葉です。
玄侑氏は福島第一原発から45km、滝桜で有名な福島県三春町の福聚寺の住職でもあります。政府の復興構想会議のメンバーにも選ばれていました。鈴木氏も被災地に足繁く通い、被災者と深く接している方です。

これまで震災の被災地の方々が苦しみながらも尊厳を保ってこられたこと、また物心両面で負担の重いであろう支援活動をされている皆さんが、そんなことを感じさせない「自然体」にみえることも、日本人がこの資質を持っていたからなのでしょう。

また玄侑氏は、かつて外務官僚として修羅場を経験し「鈴木宗男の懐刀」と呼ばれた神学者・作家の佐藤優氏とも対談していますが、その中で佐藤氏は放射線被爆について、

「専門家がうそをつく。しかも、それを監督するべき政治もうそをつく。お金も動いている。それぞれの役所は自分の身を守ることに関して天才だから、めちゃくちゃな基準をたくさん出す。その結果、国民におこることは何か。『信用できない』ということです。『ひとつだけ信用出来ることがある。政府は信用できないということだ』となっているのが現状です(一部略)」と語っています。

政権が交代し復興予算が補正され、施策が矢継ぎ早に投入されています。高い期待が集まっていますがこれから半年経ち、1年が過ぎた時に政府は「信用するに足る」存在となっているでしょうか。もしもそれが叶わなければ、2年近い月日の経過で擦り切れそうな「利他の心」は涸れてしまうのではと危惧します。
被災地だけでなく、日本全体がますます荒んでしまわないためにも、迅速な復興は必要不可欠と思えてなりません。

出典;
月刊「致知」2012年12月号 致知出版社
玄侑宗久対談集「中途半端もありがたい」東京書籍

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